
書道は自らの心を発散させて字に乗り移らせ、形を四季の自然の景物にかたどることを極意とする。ただ字画が正しければよいというものではない。
真言宗の開祖・弘法大師空海上人は、日本の書道史上最も優れた能書家の一人であり、嵯峨天皇、橘逸勢とともに「三筆」と称されます。
「書は散なり」は後漢の文人・書家である蔡
(さいよう)の作とされる『筆論』にある言葉です。お大師さまはこの言葉を引用して、自身の書に対する思想を述べられています。
お大師さまの時代から千二百年、私たちは筆よりも、鉛筆やボールペンなどを使って字を書くことが多くなりました。また、電子メールやワープロの普及により、手書きせずとも簡単にきれいな文書を作成できるようになりました。
しかし、ボールペンより、電子メールより、書道には人の心が顕れます。そして、大いなる自然をイメージして、思いを字に乗り移らせて書くことは心の鍛錬でもあり、仏道の修行に通ずるところがあります。
年の初め、心静かに筆を取り、まずは素直な自身の想いを書することから始められては如何でしょうか。