9月のおだいしさまのことば

解説
「あっつい!」、思わず口にしてしまう人も多いことでしょう。暦の上では秋を迎えたはずが、ぎらぎらと照りつける日差しは、いまだに真夏を感じさせます。
これに負けじと、日本の先人たちは、危険な暑さから身を守るために、「涼」を求めて打ち水や簾(すだれ)等、様々な方法を考案しました。
仏教では、「熱」を連想させる言葉を多く用いますが、その一例として、煩悩を火に譬(たと)えることがあります。煩悩が生ずる様は、あたかも炎が燃え上がるようであり、これが瞬く間に広がっては、長く心の中でくすぶり続けます。
特に三毒(貪り(むさぼり)・瞋り(いかり)・癡かさ(おろかさ))と呼ばれる煩悩は、我々の善い行いを妨げる猛毒であり、慎むべき対象とされます。
そのような中で、仏さまの教えは、我々の心に尊く清らかな水として染みわたり、「涼」を与えてくれます。それは、教え自体が、満月のような清浄な心、悟りを得ることを目的としているからです。つまり、教えを基に修行を積めば、心の熱を冷ますことに繋がり、結果として煩悩や苦しみを鎮めることになるのです。