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10月のおだいしさまのことば

美しい鈴虫の音色や風に揺れるススキなど、秋の足音が聞こえてくるにつれ、自然と胸が高鳴ります。もちろん読書や食欲の秋など、人により楽しみは異なりますが、何かに打ち込む時間、それを想像させる言葉には不思議な魅力を感じます。

天長六(829)年の9月に記された今回の「ことば」は、お大師さまが肌で感じられた秋の情景とともに、その心情を色褪せることなく我々に語っています。風に揺れる松や竹に耳を傾け、美しい月をじっくりと観賞する、そのような時間をお大師さまは大切にされていたのでしょう。瞳を閉じるとお大師さまが見られた光景が想起されます。

我々にとって時間は平等に過ぎていくもので、限りある大切なものです。我々が様々な活動に費やす時間は新たに生じたものではなく、限られた時間を削り割いて創り出したものです。言い換えれば今過ごしている一瞬一瞬や、これから歩む道は自身で選択した貴重なものと言えましょう。お大師さまのように有意義な時間を過ごして心の余裕を保ち、充実した日々の中で精進を重ねたいものです。