8月のおだいしさまのことば

陸上競技の四百メートルリレーをご覧になったことはあるでしょうか。その中でも日本代表が世界の強豪たちと渡り合うために磨き上げてきた、職人芸とも称される世界一のバトンパス技術には目を見張るものがあります。この競技のバトンパスには、受け渡し可能区域である「テイクオーバーゾーン」が定められています。ここで注目すべきは限られた条件の中で、ただ無造作にバトンを手渡すのではなく、走者導師が同じ方向を見据え、共に全力で走りながら呼吸を合わせて性格にバトンを受け渡している点でありましょう。
さて、密教では法を継承する際に器から器へ水を移すように、師から弟子へ教えが伝えられます。そこには、ただ静かに水を一滴も漏らさぬよう伝えられるだけでなく、師と弟子がともに未来の弟子のために、法を相承するという精神の躍動があります。師が全てを懸けて伝えるバトン。それを全力で受け止めて、自らもまた次なる走者へと命を燃やして走り出す。その精神の連鎖を思い浮かべるだけで、心が熱くなります。
今日まで受け継がれた法の灯火は、いささかも衰えることなく、今なお明々と我々の道を照らしています。バトンを次の世代に繋いでいくことこそが、今を生きる我々の大切な役割であり、先徳への報恩であるとしみじみ感じます。